参加させていただいているFACEBOOKのとあるグループで『ペット・サウンズ』が取り上げられていて、コメント欄で何故『ペット・サウンズ』というタイトルになったのかというやり取りがされていました。そこではブライアンが作った曲を聴いたマイク・ラヴが「(こんな変なもの)誰が聴くんだ?犬か?」と突っ込んだことから犬=ペットの聴く音楽ということで『ペット・サウンズ』になったという割と有名な説が言及されていました。僕も何かの本かライナーで読んで以来、その説を何の疑問も無く信じていましたが、果たして本当なんだろうか?ということでチコちゃんに叱られる前にちょっと調べてみました。
![]()
アルバム・タイトルの『ペット・サウンズ』がいつ、どうやって、誰の手でつけられたのか検証するためにまずは、『ペット・サウンズ』のアイデアが生まれるきっかけからレコードとして発売されるまでの流れを「ザ・ビーチ・ボーイズ・ダイアリー」を参考に辿ってみたいと思います。
1965/12/6 キャピトルからビートルズの『ラバーソウル』が発売される。「ドライヴ・マイ・カー」ではなく「夢の人I've Just Seen a Face」から始まるアメリカ版『ラバーソウル』を聴いたブライアンはそのサウンドに「一発でぶっとばされ」「あれこそ僕の目標とすべきもの」と思います。そしてビーチ・ボーイズとして数多くのヒット曲を作ってきた事で自分のレコーディング業界での地位はあがっているはずだから「新しいものに挑戦できる・・・弦楽四重奏とかオートハープとか、よその文化の楽器とか。」資格は充分と思いたち「全部が傑作のアルバム。今までで最高のロックン・ロール・アルバムを作ってみせる!」と誓います。
1966/1/4 ブライアン以外のメンバーは1月7日の渋谷公会堂からスタートする半月におよぶ極東ツアーのためサンフランシスコ国際空港から日本にむけ出発。
1966/1/18 この日から計27回、4か月にわたる『ペット・サウンズ』セッションがスタート。「スループ・ジョン・B」、後に「僕を信じて」とタイトル変更される「イン・マイ・チャイルドフッド」、「ペット・サウンズ」などのトラックはすでに録音済。この後、2月7日のセッション8回目まではブライアンとレッキング・クルーのみによるバック・トラックの録音が行われている。
1966/2/9 1/29のハワイ公演で極東ツアーを終了しLAに戻り、しばし休養を取っていたメンバーはこの日初めて『ペット・サウンズ』セッションに参加。ボーカル録音のためにブライアンが用意していたのは「ハング・トゥ・オン・エゴ」だった。極東ツアーで拍手喝采を受けたようなサーフィン/ホッドロッド・ミュージックの唄入れのつもりで来ていたメンバーにとってこの曲は何とも変な今まで聴いたことのない音楽でした。
>トニー・アッシャーによれば、制作中のニュー・アルバムがあまりにもブッ飛んでいることに当惑したマイクは、ブライアンに向かって「きまりを乱すなよ」と言ったという。ブライアンはこう語っている。「彼らは(ニュー・アルバムが)好きだったけれど、凝り過ぎだとも言っていた。僕は「そんなことないよ!僕らが良い音楽を作れることの証明として、このアルバムが必要なんだ」と言った。そして「心配しなくていい。たった一枚のアルバムなんだから。この後、いくらでもアルバムなんて作れるから」と言うと、皆も賛成して「分かった」と言ってくれた。」。(キース・バッドマン/ザ・ビーチ・ボーイズ・ダイアリー 2005)
しかしながらアルのリード・ボーカルにOKが出るには21回のテイクが要されることとなる。
1966/2/15 キャピトルはサンディエゴ動物園に於いて写真家ジョージ・ジャーマンによるアルバム・ジャケットのためのフォト・セッションを行なう。マイク・ラヴによれば、次のアルバムにキャピトルが付けた仮題が『アワ・フリーキー・フレンズOur Freaky Friends』=風変わりなともだちというものだったとのこと。「風変わりなともだち」=動物たちという発想からキャピトルは動物園を選んだと思われ、動物園の中で特に選ばれたのはファミリー層向けのエリアである”Petting Zoo”でした。
![]()
ペッティングと聞くとカバゴン先生世代として思わず顔が赤くなるのですが、そういう意味ではなく、いわゆるところの「ふれあい動物園」のコーナーのことです。ただ『ペット・サウンズ』というタイトルを聞いたアル・ジャーディンはやはりあっちの「ペッティング」に関連してるんだろうと思ったようなので、男って嫌ですね(笑)。
1966/3/3 アルバム用にセッションを重ねていた「グッド・グッド・グッド・ヴァイブレーションズ」がとびっきりの傑作になると2/25のセッション中に気づいたブライアンは、アルバムから切り離しシングルとして発売するために録音作業をいったん中断させる。それに伴いキャピトルが2/20に作成していたアルバム収録予定曲の社内資料が修正され「グッド・グッド・グッド・ヴァイブレーションズ」が削除される。代わって65年に録音済であったインスト曲「ラン・ジェームス・ラン」が改題され「ペット・サウンズ」としてリスト入りする。
1966/3/7 「キャロライン・ノー」がブライアンのソロ名義のシングルとして発売される。
>ブライアンの”新しい”スタイルの音楽への反響はすさまじく、彼に近い誰もがこのレコードの爆発的ヒットを確信していた。そしてそれを期待するように、マイク、カール、ブライアン、そしてブルースは、各ラジオ局用にそれぞれ感謝の言葉を入れこんだラジオ・スポットを録音した。 (ザ・ビーチ・ボーイズ・ダイアリー)
メンバーの期待もむなしく「キャロライン・ノー」は大ヒットに至らず、最高位32位にとどまってしまう。
1966/3/21 『ペット・サウンズ』セッション以前に録音されていた「スループ・ジョン・B」が発売される。以前のビーチ・ボーイズを感じさせるこの曲は全米3位の大ヒットとなる。
1966/3/22 ブライアンはユナイテッド・スタジオで愛犬のバナナとルーイが吼える声をモノラル録音する。
1966/4/16 キャピトル・レコード・タワー内のスタジオでアルバムのマスタリングが行われる。最後の作業としてアルバムの最後に3/22に録音された愛犬の吼える声と踏切を通過する列車の音がダビングされ完成。
1966/4末頃 メンバーがツアーに出ている最中、ブライアンは独りマスタリングを終えた自信作のテープをキャピトルの重役たちに聴かせる。しかし、重役たちは新しいサウンドに戸惑い、セールスに不安を抱き発売は中止と言いだす者もいたという。しかし最終的はブライアンの熱意に負け、5/16の発売が決定する。
1966/5/16 アルバム『ペット・サウンズ』が米国で発売される。
本当に大まかな経緯ですが、この中で特に気になったのは3/3にキャピトルが収録予定曲としてインストの「ペット・サウンズ」をリスト・アップしていること。予定曲としてリストに載せるからには、少なくとも仮題はつけているはずで、このタイミングで、まだアルバム用ではないかも知れませんが、「ペット・サウンズ」というタイトルがあったことは間違いのないところではないかと思われます。
では、次に家にあるビーチ・ボーイズ本の中からアルバム・タイトルについて触れた部分を引用してみたいと思います。
まずは、1986年に発表されたスティーヴ・ゲインズによる伝記本「ビーチ・ボーイズ リアル・ストーリー Heroes & Villains: The True Story of the Beach Boys」の中から。
>ブライアンは日本にいたマイクにときどき長距離電話をかけ、録音したトラックを聴かせていた。やがてグループがLAへ戻ってきたときには、ほとんどのトラックが完成されていた。そしてブライアンは、メンバーのヴォーカルだけを入れる準備を整えていたーメンバーたちは、それを気に入らなかった。彼らは、ブライアンが前もって考えておいたヴォーカル・サウンドのあり方にも異議を唱えた。伝え聞くところによれば、マイクはそれをブライアンの”エゴ・ミュージック”だと考えていたという。けれどもブライアンはあとへはひかなかった。『ペット・サウンズ』は彼の最高傑作とならねばならなかった。「ああいう音楽に慣れるにはすこし時間がかかった」とアラン・ジャーディンは認めている。「国をはなれているときには、おれたちはサーフィン・グループだった。ところが、あれはまったく新しいものだった。」ヴォーカル・トラックの収録は、困難をきわめた。ブライアンは完璧を期して、メンバーたちにかってないほど厳しかった。ブライアンが職人の親方のような態度をとりつづけるのをマイクは嫌悪した。「誰がこんなものを聴くんだ?Who's gonna hear this?」と、彼は反発した。「犬の耳にでも聴かせるのか?The ears of dog?、とおれは言ってやった。しかしブライアンの耳はあんなふうだったから、おれもそれ以上嫌味を言えなくなって、「わかったよ。べつのときにもう一回やろう」と言わざるをえなかった。とにかく声の響きだとか音色だとか音質だとかが、彼の思い通りでなければならなかった。」(スティーヴ・ゲインズ/ビーチ・ボーイズ リアル・ストーリー 1986)
「こんなもの誰が聴くんだ?犬か?」とマイクがブライアンに詰め寄ったのがタイトルの由来という一般的な説を裏付ける記載がされています。ゲインズが発表当時の記事や文献を探ったのか、あらたにマイクにインタビューしたのかは不明ですがいずれにせよ86年という時代を考えれば『ペット・サウンズ』はまだCD化されておらず(世界初だった日本が89年、本国の発売は90年)、再評価はまだ起こっていない頃なので、ある意味「否定的」な由来が一般的だったのかなと。でも、逆に言えば再評価のバイアスのかかっていない由来なのかもしれません。
続いては1991年に発売されたブライアン自身による(当時の主治医ユージン・ランディの干渉がかなりあったとも言われている)自伝「ブライアン・ウィルソン自叙伝Wouldn't It Be Nice」から。
>1966年の3月には「ゴッド・オンリー・ノウズ」のセッションに入っていたが、ようやくメンバーが、トニーと僕が書いた曲を聴き始めたのもその頃だった。彼らは、その音楽がビーチボーイズのイメージにぴったりこないと思った。実際そうだった。まず僕が彼らの演奏を使わないという事実でやる気をなくしていた。プライドが傷ついたんだと思う。さらにメンバーは、その音楽と過去の曲の隔たりに対して、心の準備をしていなかった。特に最大の関心が”売る”ことにあるマイクは、すべてが気に入らなかった。これは”エゴ・ミュージック”だと批判した。曲はアバンギャルドすぎるし、以前のサウンドではないと不満を言った。「ハング・オン・トゥ・エゴ」では歌詞を書き換え、「アイ・ノウ・ゼアズ・アン・アンサー」とタイトルを変えるまで歌うことを拒否した。
ある騒然としたボーカル・セッションの後、マイクは嫌悪をむき出しにして僕に噛みついた。「誰がこんなもの聴くんだ?犬にでも聴かせるのか?」。皮肉なことに、そのマイクの辛らつな批判からアルバムのタイトル、『ペット・サウンズ』が生まれた。(ブライアン・ウィルソン自叙伝 1991)
ゲインズの伝記と同じく「誰がこんなもの聴くんだ?犬にでも聴かせるのか?」とマイクが噛みついたことが書かれています。ただこちらは具体的な時期を推測させる内容となっています。メンバーが「神のみぞ知るGod Only Knows」の歌入れに参加するのは3/10のセッションだったことが「ザ・ビーチ・ボーイズ・ダイアリー」に書かれています。ということはマイクの「犬か?」発言は3/10もしくはそれ以降になされたということになります。
と、書いたところで「ペット・サウンズ」というタイトルを思いつくのが3/10とすると、3/3の時点で収録予定曲に「ペット・サウンズ」というインストのタイトルがリスト・アップされていたのと矛盾していることに気づきます。ブライアンの記憶違いか、インストは「タイトル不明」で記載されていたのか?それともマイクの「犬か?」発言で思いついたという説自体が間違いなのか?
次は1997年に発売され、『ペット・サウンズ』の再評価を決定づけたBOXセット『ペット・サウンズ・セッションズ』のブックレットからマイク・ラヴの発言。
>僕ら全員がウェスタン・レコードのスタジオ3の通路にたむろしていた。ブースのスピーカーからは場違いな、遠ざかっていく列車の音が流れていた。こうしてアルバムは終わった。列車が通り過ぎ、踏切りの「カン、カン」とういう鐘の音、そして犬の吠える声だ。ブライアンはまだアルバム・タイトルを決めてなかった。僕の耳には犬の鳴き声がまだこだましていたので、「『ペット・サウンズ』というのはどうだい?」といったんだ。(『The Pet Sounds Sessions』1997 ブックレット マイク・ラヴ序文)
「誰がこんなもの聴くんだ?犬にでも聴かせるのか?」と噛みついたはずのマイクなのに、そのことは一言も触れずブライアンの愛犬の吼え声を聴いて思い付き提案したとしています。おそらくこの発言はBOXの発売のために新たに行われたインタヴューのもので、すでに『ペット・サウンズ』は『サージェント・ペパーズ』と並ぶ傑作だったという再評価が広まって来ていた時期なので、そこでアルバムを貶していた(=理解できていなかった)と宣伝することは自分にとってプラスにはならないということでバイアスをかけて事実を捻じ曲げちゃったのじゃないかなと想像します。
同じくBOXセットのブックレットから今度はカール・ウィルソンの記憶を。
>誰がタイトルを思いついたのかはよくわからない。ブライアンだったと思う。彼のアイデアは「誰にでもこういう大好きなサウンドがあって、これは僕の”お気に入りのサウンド”のコレクションだ。」というものだった。アルバムのタイトルを考えるのは難しかった。まさか『シャット・ダウンVol.3』ってわけにもいかないだろう。
((『The Pet Sounds Sessions』1997 ブックレット カール・ウィルソン序文)
確かにPETという単語の意味を調べると形容詞として
1.お気に入りの、かわいがっている
2.ペットの
3.〔言動が〕得意の、おはこの
という意味が書かれています。Pet Sounds=お気に入りのサウンド、マイクの「犬か?」発言から生まれたという「ペットのサウンド」とのダブル・ミーニングとしてありですね。
次は2005年に発売された、ビーチ・ボーイズのセッションおよびツアーを詳細に記録した「ザ・ビーチ・ボーイズ・ダイアリー」に記載された由来。
>新しいLPのタイトルは、この盤にはブライアンの「ペット」や彼の好きなサウンドが詰め込まれているからと、マイクが選んだものだった。マイクはこう回想している。「僕らはスタジオの中で立ち話をしていた。その時まだタイトルが決まっていなかったんだけど、何か意味が2通りに解釈できるようなものがいいと思っていたんだ。その前、僕らは動物園に行って動物と一緒に写真を撮っていたし、レコードには動物のサウンドも入っていた。それにその頃はそういう音楽が好きだったから、それで『ペット・サウンズ』はどうかな?」とブライアンに言ったんだ。(ザ・ビーチ・ボーイズ・ダイアリー)
97年のBOXセットのブックレットの流れにある発言に思えます。いい子ちゃん発言。注目したいのは新たにジャケットとなった動物園での写真撮影に触れていること。動物園、犬の吠える声、大好きなサウンドに共通するワードとして『ペット・サウンズ』となったということです。
そして手許のビーチ・ボーイズ本などからはブライアンやメンバーの発言としては見つからなかったのですがネットなどで散見するもう一つの由来。それはビートルズの『ラバーソウル』とともにブライアンが越えようとしていたもう一つの山脈、フィル・スペクターの存在です。スペクターの生み出した音楽は「ウォール・オブ・サウンド」や「スペクター・サウンド」と総称して呼ばれています。スペクターは、それまでは歌手とそのバックとして録音されていた音楽を歌手もバックもひっくるめ(むしろバックが主役のような)ひとつの「サウンド」にしてしまうという転換をロックン・ロールにもたらしました。
スペクターを崇拝していたブライアンはスペクター・サウンドを越える自分のサウンドを作りたいという思いも『ペット・サウンズ』のサウンドに込めていました。そしてその思いをこっそりと表すために
フィル・スペクター(Phil Spector)のイニシャルと同じ『Pet Sounds』というタイトルを選びます。
ただこのPhil Spectorと同じイニシャルのPet Soundsというタイトルを考えたというのはアルバムのタイトルとしてではなくインスト曲「ペット・サウンズ」のために考えられたのじゃないかとも思います。というのはスペクターはシングルを発売するときにA面にはもちろん自信曲を収録していましたが、B面はラジオDJに必ずA面曲をかけさせるため、印税稼ぎのため、セッション・メンバーを喜ばすためなどの理由から「Nino And Sonny (Big Trouble)」「Harry And Milt Meet Hal B」「Tedesco And Pitman」といったセッションメンの名前をタイトルに入れこんだインスト曲を収録していました。そんなスペクターの流儀にブライアンものっとっていたのではないかということです。
調べればもっといろいろ出てくるのでしょうがきりがないので以上のような事項からがいつ、どうやって、誰の手でつけられたのか妄想してみますと。
『ラバーソウル』やスペクター・サウンドに追いつけ追い越せでセッションをスタートしたブライアン。メンバーがツアーで不在なのを好機とみてスペクター・サウンドの担い手であったレッキング・クルーの面々を贅沢に使いとにかく自分の納得がいき、誰も聴いたことがないが、一度聴けば、みんなのお気に入りになるようなサウンドを目指してセッションを続けます。
いつも以上に気合の入ったセッションを続けるブライアンを見たキャピトルは早速ニュー・アルバムの発売に向けての準備を進めます。そしてアルバムに『アワ・フリーキー・フレンズOur Freaky Friends』という仮題をつけます。そしてFreaky Friends=動物という発想からメンバーのツアーが終わった2/15に動物園のふれあい動物園(Petting Zoo)でフォト・セッションを行います。
このPetting Zooという言葉が「お気に入りの」という意味も持つことに気づいたブライアンは「お気に入りのサウンドを作ろうとしているのだからPet Soundsってのはいいかもな」と思いつきます。同時にPet SoundsのイニシャルのPSはPhil Spectorと一緒だと気づき「これだ!」と喜びます。そして既に録音済みであったインスト曲の「ラン・ジェームス・ラン」を「ペット・サウンズ」と改題しアルバムに収録することを決めます。
3/7にはブライアンの新しいサウンドを世に問うべく、ブライアンのソロ名義で「キャロライン・ノー」がシングルとして発売されます。そして10日には「神のみぞ知る」の歌入れが始まりますが、ここでリード・ボーカルに起用されたのはカール・ウィルソンでした。楽器の演奏はほぼすべてスタジオ・ミュージシャンでボーカルもなかなか自分が主役になれないことに業を煮やしていたマイク・ラヴに振られたのは当てつけのような「ハング・オン・トゥ・エゴ」。ついにマイクはスタジオで切れてしまいます。「誰がこんなもの聴くんだ?犬にでも聴かせるのか?」。
ふれあい動物園(Petting Zoo)で撮った写真、お気に入りの音楽(Pet Sounds)、フィル・スペクター(Phil Spector)、ペットの犬に聴かせる音楽・・・、すべてをつなぐ言葉は「ペット・サウンズ」であり、幾重にも重なった意味をもたせることができるタイトルはそれ以外にない!ここでブライアンはインスト曲のタイトルであった「ペット・サウンズ」をアルバム・タイトルとして昇格させることを決めます。
タイトルを決めたブライアンは「キャロライン・ノー」で終わるはずであったアルバムの最後に、マイクが放った「犬にでも聴かせるのか?」という言葉をネタとしていただき、愛犬バナナとルーイの吼える声をわざわざスタジオで録音し曲の最後にダビングします。
「マイク、あんたの言う通り犬がアルバムを聴いていたような終わり方にしたよ、ただ2匹は僕のペットなんだ、つまりはこのアルバムは僕のための『ペット・サウンズ』なんだよ、君は気づかないだろうけどね。」
なんてことないか・・・・。